フードダイバーシティ時代。宗教上の食のタブーを理解しておこう!
急速にグローバル化する日本。勤務する会社に外国人の同僚がいる人も多い時代ですよね。ランチに誘おうと思ったけど
「あれ…インド人を豚骨ラーメンに誘っていいのか…?いや、豚がだめなのってユダヤ人だっけ…?」
というように、宗教による食のタブーがあることは知っていてもその内容をしっかり把握出来ていない方は多いのではないでしょうか。周りに居る異教徒の方を尊重する為にも、ここらできっちり基本を押えていきましょう!
もちろん同じ宗教でも宗派による差異もありますし、どの程度教義を遵守するかは個人によっても差があります。
わたし自身めちゃめちゃお酒を楽しんでいるイスラム教徒に出会ったこともあります。どの宗教にも緩めな人とガチ勢がいますので、ご本人にお伺いするのが確実であることは前提です。
このページの目次
1.インド生まれの宗教
1_1 ヒンドゥー教
ガンジス河での沐浴がイメージに強いヒンドゥー教。額にラティカやヒンディといった装飾をしているのがの見た目的な特徴です。インド人口の80%がヒンドゥー教徒なので、インド人と出会ったらその方がヒンドゥー教徒である確率はかなり高いです。
ヒンドゥー教徒は牛肉を食すことが絶対的タブーとされています。シヴァ神が聖牛を乗り物にすることから牛は神聖な生き物とみなされている為です。逆に豚は不浄な生き物とされ、これも口にすることはありません。菜食が基本ですがもし肉を食べる場合は、鶏、羊、ヤギに限定されます。乳製品や卵は個人差がある部分ですが、厳格なヒンドゥー教徒は動物性成分の一切を避け五葷(ごくん)も摂取しません。
1_2 仏教
世界三大宗教の1つ、仏教。仏教は多くの宗派が存在し、一般の信徒なのか僧侶なのかによっても厳しさは変動しますので食の規定を一概に定義することは難しいのですが、基本的に共通した意識としては“命を奪う行為”、殺生を避けるということです。そのため精進料理が発達しました。厳格な仏教徒は肉全般と飲酒、五葷(ごくん)を避ける傾向にあります。
日本では明治時代に僧侶の肉食妻帯が認められてから、ほとんどの宗派で食のタブーがなくなりました。なので日本人の仏教徒と食事をする際は食材に気を使う必要はないと思われます。
※五葷(ごくん)とは、葱、ニンニク、韮、らっきょう、浅葱のこと。五葷が避けられるのは、臭いが強く修行の妨げになるという説と、陰陽五行思想に基づくという説があります。
1_3 シク教
“インド人=ターバン”のイメージが強いですが、実はターバンを巻いているのはシク教徒だけなんです。しかもシク教はインド人口のたった2%。それだけターバンは見た目にインパクトがあり目立つ装いということなんですよね。一目でわかる装いをすることで、信徒として正しくあらねばならないと自分を律する意味があるそうです。(髪を切ってはいけない掟なのでターバンの中には長〜い髪の毛が収納されています。)
タバコやアルコールは禁止されていますが、肉食は明確に禁止されているわけではありません。ただ自主的に菜食を貫いている教徒も居るので、寺院で肉を供えることはありません。
1_4 ジャイナ教
徹底した苦行と禁欲主義で知られるジャイナ教。不殺生を教義としているので食に関しても規制事項が多く、口に入るものには非常に気を使います。誤って虫を殺してしまうことがないようマスクをしホウキで前を払いながら歩く、そんなジャイナ教ですから肉・魚が禁止なのはあたりまえ。野菜でも根菜類など植物の殺生に繋がるものは摂取しません。また、料理と食事は日中に済ませます。これは手元が暗い時間帯だと誤って虫を殺してしまうことがあるかもしれないからです。同じ理由から調理に火を使うことも出来ません。
2.中近東生まれの宗教
2_1 キリスト教
世界三大宗教の1つ、キリスト教。かつてのキリスト教では、金曜は肉食を避け魚を食すという風習がありました。(なぜ金曜かといえば金曜はキリストの受難の日だからです。)現在でも限られた地域でこの風習が残っている宗派もありますが、大多数の信者とっては有名無実と化しています。現在キリスト教は食に関してそれほどタブーはなく緩やかです。ただ一部のキリスト教徒(モルモン教、セブンスデー・アドベンチスト教会など)は食事の規制事項がありますので確認が必要です。
2_2 イスラム教
世界三大宗教の1つ、イスラム教。イスラム教では生活全般においてハラーム(=禁じられた)という規定があります。特に食事に関してはアルコール、死肉、血、豚肉、アッラー以外の神への供物など、口にしてはいけない食材が多く存在します。死肉とは自然死や病死した動物の肉のことで、イスラム教では法に則った屠畜法で得た肉のみ食すことが可能です。アルコールに関しては飲酒のみでなく売買や醸造も禁止されています。ムスリム(=イスラム教徒)は、ハラールといってシャリーア(=イスラム法)で許されている食材や料理のみ摂取することが出来ます。
2_3 ユダヤ教
ユダヤ教にはカシュルート(=適正食品規定)と呼ばれる厳密な食事規定があります。カシュルートの内容はとても情報が多く難解です。代表的なものでいえば、肉と乳製品を同時に食べてはいけない合食禁(つまりチーズバーガーはNG)、食用となる生き物はシェヒーターという屠殺方法のみ許されていること、“反芻しない”もしくは“蹄が分かれていない”不浄な動物は食さないこと、海の生き物はヒレと鱗のないものはNGなどがありますが、これらは規定のほんの一部です。ユダヤ教上適切に処理された食事はコーシャミールと呼ばれます。
3.日本生まれの宗教
3_1 神道
アニミズム(自然崇拝)から発祥し、八百万(やおよろず)の神を祀る神道。日本人の生活と心にいつしか根付いている宗教です。アニミズムなので強い教義はありませんが、しいていえば「浄明正直」。罪や穢れがなく清らかな状態であることが求められます。
神道に関しては一般人に食のタブーはとくにありません。神事のプロである神職は、穢れの観念から祭りの直前は肉食を控えお茶やコーヒーなどの嗜好品を経つ傾向にあります。アルコールは常識の範囲内ならOKとしていますが、やはり祭りの前夜などは神酒として日本酒のみ少量いただくにとどめます。
[ページ内使用イラスト]:Pikisuperstar/freepik(多民族の人々)
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